本当は優しいよ
手術室の看護婦さん

ちょっと恐かった

お化粧のせい?

病院へ行くと看護婦さんを見かける。これはよくあることで、みなさんも「看護婦さん」がどのようなお仕事をしているか、どのような制服を着ているか(?)等ということはご存じのことと思う。
白い(最近はピンク等色つきもある)制服を着て優しく病人のお世話をしてくれる看護婦さん。

しかし、本当は看護婦さんにも色々なお仕事の違いがある。
例えば手術室の看護婦さん。手術室で働く看護婦さんは、病棟の病室で働く看護婦さんとは違う。
厳密にどう違うのか(例えば、資格が必要なのかどうなのかとか・・・)はよくわからないけれど、実際に手術室へ入ると今まで会ったことがない看護婦さんばかりだった記憶がある。

最近は、某テレビ局の某番組を見てご存じの方も多いかと思うが、患者が手術をするために手術室へ運ばれて行く時、病室から手術室の前までストレッチャーで運んでくれるのはみなさんがよく知っている病棟の病室で働く看護婦さん。でも、手術室のドアが空くと、看護婦さんは中から出てきた違う看護婦さんへ「○○さんです。宜しくお願いします。」と言ってその患者を引き渡してしまう。病室で働く看護婦さんは手術室の中には入ることができない(?)。患者が戻って来た時にお迎えに来てくれるけれど、それまでは違う看護婦さんがお医者さんのアシスタントをするようだ。会社で担当のお仕事が決められているように、看護婦さんも仕事の分担があるのだと思う。

私が7歳の時、私は手術室へ行くハメになった。
この時も「癌の告知」の話ではないけれど、私の意思は無視である。大人同士、つまりお医者さんと私の両親で話し合って「では、やりましょう。」ということになって、私には「いついつ手術するからね。」という報告のみである。みんな、子供だと思って私の意思を軽くみていたに違いない。本人としては非常に納得がいかなかった。『おいおい、決定する前に誰か私に「どうする?」くらい聞いてくれたっていいじゃないか。子供だってちゃんと毎日考えているんだぞ。感情もあるもんね。』というところだ。

話が少しそれてしまったが、そうそう、私は手術室へ運ばれて行ったのであった。
手術室の前までは、いつも体温計を持ってきてくれたり、お話をしてくれたりする顔なじみの看護婦さんだったのに、ドアが空くと中から違う看護婦さんが出てきて「わかりました。」とかなんとか言って、私の寝ているストレッチャーを運んで行くではないか。これには子供の私は心細さと恐怖を憶えた。
理由その1。
私は人見知りする子供であったため、いきなり知らない人が出てきて心細くなった。
理由その2。
手術室の看護婦さんは、その時みんな(何人か正確には憶えていないけれど、数人いた)顔が恐かった。
誤解のないように言っておくが、「顔が恐い」というのは、別に造作的に恐いということではない。造作的に言えば「整った」人が多かったように思う。
私が恐いと感じたのは、看護婦さん達の顔がみんな「きつそう」に見えたから。
まず、「目がつり上がっていた」ように思う。もともとみんなの目がつり上がっていたとは考えにくいので、今思えば、髪の毛が出ないようにきっちりキャップを被っていたので、それで引っ張られて目がつり上がり気味になってしまったのではないか。
それから、なんとなく「お化粧が濃い」イメージがした。子供の思い込みなので、なんとも言い難いが、病室の看護婦さんに比べると目の回りが「蒼かった」ように思う。
目の周りの色が濃いと「化粧が濃い」感じがしてしまう。きっとたまたまその時のアイシャドウの色が「ブルー系」だっただけなのだろうが。

とにかく、そんなこんなで第一印象が「恐い」というものになってしまった。
それでなくともこれから恐いことが起こるであろう時に、今までの看護婦さんと全然違うタイプの看護婦さん達に囲まれて「イヤダー。恐いよ。」と不安が倍増。しかし、周りはそんな私の思いとは関係なくどんどん作業を進めていく。点滴の針を刺すとか・・・。
しかし、この「点滴の針を刺す時」に、看護婦さん達に対する印象が変わった。

なんだ優しいじゃない!

他の看護婦さんと同じかな?

たぶん、麻酔の薬を入れるためだと思うが、看護婦さんは点滴をすると言う。
その時、一人の看護婦さんが「この子は、すごい我慢強い子なんだってよ。」と言った。
「あら、そうなの?じゃあ、泣かないかな?」
「そうね。強いもんね。」
注射や点滴は慣れているわい。そんなもの大丈夫さ。
実際に針を刺しても、私は泣かなかった。
「あら、本当だ。強いのね。偉いんだね。」
褒められて得意の私は「へへん、当たり前だ。」と心の中で思った。
さすがいつも手術室でお仕事をしているだけあって、リラックスさせる方法を知っているというか、まんまと乗せられたという感じ。

点滴の針を刺し終わると、なんだか背中がポカポカと暖かくなってきた。
すると、また看護婦さんが話しかけてきた。
「背中がポカポカしてきたでしょ?あったかくて気持ちいいでしょ?退院したらお母さんに言って買ってもらったらいいわ。」
確かに暖かくて気持ちいいが、うちの母親が買ってくれるとも思えないよ・・・。そんなことを考えたところまでで、記憶がなくなった。

私の目が覚めたのは、病室に戻ってからだった。病室では、いつもの看護婦さん達がまたお世話をしてくれた。
手術室の看護婦さんとは少ししかお話できなかったけれど、私の気持ちを少しでもリラックスさせようとしてくれたんだなーと感じたので、きっとみんな優しい人なんだと思う。
「きつい感じ」がしたのは、手術の現場で働いているので、気持ちをしっかり持っていないとできないということもあるのかなと思う。
第一印象は恐かったけれど、それは訂正させていただくことにする。どこの担当でも、やっぱり看護婦さんは優しいよ。

ところで、うちの母親が例の「背中がポカポカ暖かくなるマットレスのようなもの」を買ってくれなかったのは私の思った通りだった。


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